「農業と作物の当たり前が今、全く当たり前ではなくなっています」そう話すのは、取締役COOで事業開発責任者の下地 邦拓さん。日本、そして世界で起こっている干ばつの現状と、それらを解決するEFポリマーの可能性についてインタビューしました。日本は水が豊かな国ではない「まず皆さんに知ってほしいのは、日本には十分な水がないという現実です。普段生活している分には気づかないかもしれませんが、農家にとっては非常に深刻な状況です。例えば、北海道東部ではこれまでにない干ばつが起こっており、水が豊かなイメージがある新潟でも雨が降っていません。さらに、気温の高まりにより、これまで日本の南の地域で育っていた作物がどんどん北上しています。サツマイモの栽培が北海道で始まっているほか、果樹や野菜の栽培エリアも変化しています。生活の当たり前が全く変わってきているのです」日本で作られている主な農作物は、お米や芋類、ねぎ類、トマトや苺などの果実的野菜類、大根や人参類の根菜類など。どれもレストランや食卓ではよく見かけますが、このまま気候変動が続けば、これらの作物が気軽に買えなくなってしまうかもしれません。参考:農林水産省「令和4年 農業総産出額及び生産農業所得(全国)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekkagaiyou/seisanshotoku/r4_zenkoku/また、日本は国内で消費している小麦、大豆、トウモロコシ合計2,570万トンの需要量のうち、そのほとんどの約2,430万トンを輸入に頼っています。参考:三菱総合研究所「日本の食料国内生産と輸入量の実態」https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20230302.html昨今の物価高騰や円安の影響により、日本の食の未来を懸念している方は多いと思います。私たちは、日本の食の課題とどう向き合っていけばいいのでしょうか?世界はもっと深刻で、農業と観光の争いまで起きている「海外の状況はさらに深刻です」と続ける下地さん。「スペインでは、『過去100年で最悪の干ばつ』と言われる現象が起こっており、2024年2月には、深刻的な水不足を受けてバルセロナを含む200以上の地域に緊急事態宣言が出されました。これにより、観光業と農業が水を取り合うレベルにまで達しています」参考:テレビ朝日「過去100年で最悪の干ばつ」スペインで緊急事態宣言 “水制限”観光に影響も https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000335406.html水を巡って観光と農業が対立。現代ではなかなかイメージしづらいですが、実際に海外で起こっている水不足の状況です。今後、日本でも同じような課題に直面するかもしれません。さらに身近な問題をあげると、天候不順や病害による不作で供給がひっ迫していることが引き金となりブラジルでオレンジの供給ショックが起き、十分な量のオレンジを輸入ができず、オレンジジュースの販売をストップする日本企業が多く出てきていると言います。参考:NHK 愛媛のあのジュースも オレンジに“異変”で値上げ 販売休止https://www.nhk.or.jp/matsuyama/lreport/article/002/81/日々の買い物やニュースにアンテナを張ってみると、私たちの食生活が変わってきていることが分かります。気候変動により影響を受ける作物と、輸入に頼る日本が施すべき対策が浮き彫りになっているのです。そして、これらの農業課題を解決に導くのが、EFポリマーなのです。EFポリマーがどのように農業を支援するのか「農業における従来型のソリューションは、石油由来のものを中心に環境配慮の観点から課題が多かったのです。それに比べて私たちが製造しているEFポリマーは、環境と人にやさしい、作物残渣を利用した100%オーガニックの吸水ポリマーです」と下地さん。EFポリマーは農業に最適な自重の約50倍を吸水するため、天然の保水剤として土壌の吸水力を向上します。乾燥しやすい土でも水分や肥料を長期間土壌に留めることができ、水や栄養素が土壌で流れ出るのを防ぎ、作物の成長をサポートするのです。さらに、ポリマーが水分の吸水と放出を繰り返す過程で土中に気相を作り、土壌の団粒構造化を促進します。その結果、農業の現場では最大40%の節水と、20%の肥料の節約につながります。水不足などの厳しい環境下でも、安定的な収穫量が期待できるのです。また、将来的にはEFポリマーを利用した農地で育てられた作物の残渣を有効活用(アップサイクル)し、また新たにポリマーを製造する、地産地消型・循環型モデルも実現可能です。▶️EFポリマーの詳しい概要を見るhttps://ja.efpolymer.com/ブラジルからのオレンジの供給不足によるオレンジジュース事業の撤退を例にあげると、EFポリマーを活用することで、以下の解決方法を導くことができます。①農作物の生産現場でEFポリマーを活用し、干ばつの問題を解決。オレンジの供給側から日本企業としてサポートする②オレンジの国内の生産現場でEFポリマーの利用を広げることで国内においても安定的な生産をサポートする「日本は作物と収穫量が著しく不足しており、自分たちで作らないといけないニーズが高まっています。私たちができるのは、EFポリマーを提供し、それぞれの作物・地域に合った散布方法を見つけ、水と肥料を節約し、良い作物を多く作ってもらうことです」COOとしてEFポリマーを世界に広める下地さん事業開発責任者として国内外のお客様やビジネスパートナーとつながる下地さん。OIST(沖縄科学技術研究大学)での勤務時にEFポリマーCEO・ナラヤンさんと出会い、グローバルの農業課題を解決に導くEFポリマーの可能性に惹かれ、2年前に入社しました。「3人目の正社員として、入社直後からナラヤンのアイデアやパッションを対外的に伝えたり、資金調達のために投資家への説明をしたり、会社と外部をつなぐハブとなる存在として動いてきました」アメリカ・フランス・スペイン・タイ・ブラジル・ボリビア・ペルーなど、世界各国を訪れてEFポリマーを広めている下地さん。この2年を通して見えてきたビジョンとは何なのでしょうか?見据えるビジョン「私たちのやるべきことは、いち資材メーカーとして、農家の課題を解決するために商品やお客様と向き合うことです。また、大きなスケールで日本や世界の農業課題を考えた時に、私たちだけでは成し遂げられません。必要なのは、『競争』ではなく、『協業』。資材、農機や肥料の質を改善するために他の企業と連携すべきだと思っています」例えば、サテライト(人工衛星)を使って干ばつ状況や肥料が足りていない場所を把握したり、バイオ炭を組み合わせた肥料を開発している企業もあります。こうした企業と力を合わせて、農家の課題を解決する新しいサービスを提供することなど。「深刻化している農業の課題に、皆でもがき続けたい。お客さんの声を聞いて、製品と使用法をアップデートしていけば、EFポリマーはもっともっと伸びると思う。私たちの存在意義は、生産者を支援し、持続可能な農業を支援すること。沖縄から世界へ奮闘している実感は日々大きくなっています」〜編集後記〜沖縄県出身、好きな野菜はオクラだという下地さん。アメリカの大学を卒業後、米国企業、日本の外資系企業を経て、2020年に沖縄にUターンしたそうです。親しみやすい雰囲気を持ちながら、質問に対する情熱的で賢明な返答が際立っていました。この日の取材前も、CEOのナラヤン氏と英語で熱心に意見を交わしている姿が印象的で、この時の写真も撮っておくべきだったな〜と、少し後悔しています。この記事を書いた人:EFポリマー編集チーム 稲福加奈